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彼は背筋を伸ばして続けた。
「僕は室内勲人です。職業は歯科医です。K交響楽団の定期会員で月に一度クラシック音楽を楽しんでいます」
突然の生真面目な自己紹介に呆気にとられた。
すると、彼は右手を差し出した。
「あなたとお付き合いしたいと思ってます」
「え?あ、はい」
反射的に差し出された手を握った。
「私はT商事に勤めている鈴村みのと申します。私もK交響楽団の定期会員です」
そう笑顔で答えると、彼が朗らかに言う。
「そろそろ、駅に」
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