足りない部分のやり直し

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「零ちゃんが、ちゃんとお兄ちゃんっぽい発言してる」 「ぽいって何だよ」 そう言うと、大きくため息をついて、私を眺める。 「お前も生意気に育ったよな」 「何それ?」 ちょうど場所は公園に差し掛かった辺り。 零ちゃんは足を止めると──遠くの方に、視線をやる。 「きっと紫さんが居たら、俺は杏南の"お兄ちゃん"にさせられてたのかもな」 「……そうかもね」 きっと母が生きていたら、私は別の人を選んでいただろう。 母が望みそうな──零ちゃんも望んでいた、普通で平穏な生活を送れそうな人を。 ──この人と結ばれることはない。 そう諦めながら。 「でも私は、一番好きな人と結婚できたから良かったと思う」 きっと私は、どんな男性と会っても──零ちゃん以上に、好きになれる人と出会うことは無かっただろう。 だから今の、この人と結婚しているという事実は、昔の自分からすると予想外で……一番嬉しい話なんだと思う。 零ちゃんの腕に、自分の腕を絡ませてみると、こっちを見て微笑んだ「色々すっ飛ばしてしまったけどな」と。 「何かその辺は申し訳ないなぁとは思ってる」
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