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中身を掌に乗せると、風に吹かれて舞っていく。
海に舞い降りた遺灰は──波に乗って沖へと流されていく。
私はただぼうっと、その様子を見つめていた。
零ちゃんもその様子を見つめながら、ぎゅっと私の手を固く握っていた。
不思議なことに、涙は出なかった。
だけどきっとそれは──この握られた手が、今の私の生きている証だから。
私は今この人と生きているからだと、そう思ったのだ。
「戻ろっか」
遺灰が完全に見えなくなるなると、私は零ちゃんの手を離した。
そして後ろに振り向き、砂浜に向けて歩いていく。だけど一瞬、零ちゃんの足が止まった。
(あっ……)
目の前に現れたのは、赤い髪の女性。
私よりも少しだけ薄い髪の色──見つめる瞳も、私よりも少し薄い灰色。
「Olivia……」
やっぱり彼女は──そうだった。
自分でも思うのだから。彼女と私は、少し似ていると。
「Da quanto non ci si vede,REIJI」
彼女は私達に向かって、にっこりと微笑んだ。
そして私を、じっと見つめる。
「Anna……」
次の瞬間──彼女の目には、涙が浮かんだ。
「Mi dispiace tanto.」
声にならない声をあげながら、私達二人を抱きしめた。
小刻みに震えていて、泣いているのはわかる。
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