箱庭の行方

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四泊のイタリア観光を終えた後、私達はロンドンに渡った。 元々お義母さんが長い間留学していた土地で、ヨーロッパに行くのであれば是非とも行ってみたいと思っていたのだ。 お義母さんに行こうと思っていることを言うとすごく喜んでくれたが……一点だけ。「料理だけはお勧めできない」と引くぐらい真剣な顔をして言っていたので、一日だけ滞在の予定だった。 だけど滞在を、一日伸ばすことにしたのだ。 ロンドン滞在二日目。 私と零ちゃんは今、ロンドンのとある大学を訪れている。そこに併設されてある、ギャラリーの前に居た。 「こんにちは、お越しいただきありがとうございます」 出迎えてくれたのは、少しぎこちない日本語で話すケント ベネット教授。 後から聞いたけれど『母親が日系人』というルーツを持つ彼は、少し日本語が話せるらしい。 (だから東洋の研究をしてるのか…と納得したが) 「こちらこそ、ありがとうございます」 握手をしながら頭を下げて挨拶をする。 そして「どうぞ」と中に案内された。
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