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「あちらです」
案内された先にあったもの──それは『Miyamoto Yukari』とクレジットされてある絵だった。
作風からしても、母の絵に間違いはない。
祖母の好きだった鮮やかな緑が、沢山描かれてある絵だ。
「ミヤモトユカリの作品は、日本画との融合が素晴らしい。この絵も日本画の技法が使われている」
ベネット教授は、熱心に絵について解説している。私はそれを聞きながら、胸に込み上げるものがあった。
母の生きた証が、ここにあったのだ。
「こんな大切に飾られていて、嬉しい」
そう言うとベネット教授は、にっこりと微笑んだ。
「美術館に行けば、いつでも彼女に会える。
何十年、何百年先だって、会うことができる」と、そう言った。
「恐らく彼……ドルフ.Rも影響を受けている。いくつか日本画に使う岩絵具を使った作品が残されている。この作品もそうです」
指差した先には、DOLF.Rのクレジットの絵。
確かに描かれている鮮やかな朱色は、日本を感じさせる色だ。
(不思議だな……)
私は生きていないのに……何となく、二人の生きている時のことを見たような気がしたのだ。
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