234人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく歩いていると、彼女の知り合いらしき人が「HEY!」と話しかけてくる。
「彼女は誰?」
「客人よ、カブラギ レイジの妻」
「君の親戚かと思った」
その人が行った後、ぼそっと「In a sense, that's right.」ある意味正解だと言ってクスりと笑った。
「私があなたのことを知ったのは、随分と後だった。レイジがユカリと一緒に暮らしていると聞いて、その時にあなたのことを知った。ユカリがレイジの先生だったことも初めて聞いたの」
私を見つめると「一度会いたかった。でも会えないと思っていた」と、目を細めた。
「でもあなたは、私を恨んでますか?」
私は──彼女に恨まれても仕方がないと思っている。
「私が産まれるから、母は日本に帰った。あなたを残して帰った」
そう言うと口角を上げてこう言った。
「あなたこそ私のことをどう思う?」と。
「父の絵を守るために、彼を利用したの。後悔はしてない。だけど死ぬまで恨まれても仕方ないわ」
「あなたは本当に………」
きっぱりと彼女は零ちゃんのことを"利用した"と言い切っている。
でもそれ以上に言葉が出てこなくて、詰まった。
最初のコメントを投稿しよう!