箱庭の行方

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でも言いたいことをわかってか、彼女は肩を竦めた。 「私の初恋は三歳の頃だったわ。父の友人の日本人だったの。でも一瞬で失恋したわ。もうすぐ二人目の子供が産まれるって言うんだもの」 少し苦笑いの表情で、そう話す。 「彼とは数年に一度会うことができた。会えない時は手紙を書いたわ。でも父が亡くなって会えなくなった。それでも私は諦めずに手紙を書き続けたの。高校を卒業して……父の本当の仕事を知るまでね」 彼女は私を見つめて「似てるでしょ?彼は」と。 脳裏にあの人を思い浮かべて─頷くとふふっと笑った。 「私は彼の目が好きだった。私と話す時の真面目な目が好きだったの。レイジも同じ目をしている。絵を描いている時の、真剣な顔がすごく好きだったの。それに彼はMagician(魔法使い)だわ。彼の絵はmagic(魔法)だと思う。彼は私のSTARよ、永遠に」 力強く"STAR"だと言い切った彼女を見ると──やっぱり愛していたのは、本当だったんだなと。 一番疑問だったその事が、ようやく彼女の表情で、腑に落ちた。 「私も同じ。彼は魔法使いだと思う」 「でもあなたは誰よりも彼を愛してる。そうでしょう?」 そう聞かれて「Ofcourse(もちろん).」と力強く頷いた。
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