箱庭の行方

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その後、オリビアは色々な場所を案内してくれた。 ここはよくある日本の大学の造りとは違って、伝統的な旧い造りの建物で、ただ歩いているだけでもすごく面白い。 そして至る所で、学生が制作をしている。 ここは世界でも最高峰の芸術大学らしく、目に入る人の作品全てのレベルが高い気がしている。 「Olivia!」 廊下を歩いていると、数人のグループが彼女めがけて走ってきた。 そして何やら親しげに話している。 「あなたも見ていかない?」 コクりと頷いて、皆に続く。 案内された部屋にあったものは、半分は色鮮やかで半分は色褪せた絵だった。 皆で何か喋っているが、聞きなれない単語ばかりで正確に聞き取れない。 スマホの翻訳機も拾ってくれないので、今がどういう状況であるかもあまり把握できない。 「これは何?」 会話の途切れ目で質問すると「ごめんね、説明しなくて」と謝られる。 「これは絵画の修復をしているところよ」 「修復?」 「私も一応、修復師をしていたから」 そしてため息をついて「あまり仕事は好きではなかったけれど……」と、ぼそり。 でも教えることは好きみたいで、熱心に作業している人に教えていた。
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