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「あっれー、何だか知ってるような知らないような方がこちらに。」
マンションの脇の電柱にもたれている背の高い人影に向かって言ってみた。知ってるような知らないようなって何ですかと苦笑する声が聞こえて、何でか肘を取られている。
「フラフラしてますよ?どこで飲んでたんですか。」
「ないしょ。しかも丁寧語の人とか、知りませーん。」
マジかよ、根に持ってんな、と耳慣れた毒づきが聞こえてきた。
「小笠原先生と一緒?」
「違います、ひとりです。」
あれ、カギどこだっけ。ごそごそやってみるものの全然探せない。
「俺、見ようか?」
顔が近づいてきて大きな手が中をまさぐっている。それを見ているだけで何だか身体が熱くなってくるから参る。あった、開けるよ?長い指にご機嫌にカードキーが挟まれている。うちのカードキーはオンナだったか。
「ん、ありがと。じゃあおやすみ。」
そう言って振った手が握られた。全く、こいつはいつでもどこでも。
「上がるよ。」
「いいってもう大丈夫。こんなの慣れてるし。」
そうだよ、一体何年一人で生きてきたと思ってんの。やけぼっくい野郎はとっとと帰んな。
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