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「ちょ、何?全く、酔っ払いの典型だな。」
えっ、えっと嗚咽が漏れる。もう何が何だか。
「やけぼっくい…」
「だからわかったって。好きなんだろ、その言葉。さ、ベッド行こう。立てそう?」
そうか、ドラマとか映画じゃないからここでお姫様抱っことかないんだよな。さすがの由良先生でも。
「死ぬほど嫌い。」
「え?」
「やけぼっくい。」
「はいはい。」
頭を撫でられている。癪に障るからその手をひっつかんだ。涙は相変わらず流れているけど。
「再燃なんて勝てないじゃん。しかもすぐ戻れるような理由で別れたなんて。三年も付き合ったなんて、女子ホイホイのくせに。本気だったって、そんなの誰でもわかるって。」
女子ホイホイって何だ、と首をかしげている。このおとぼけ野郎。
「まだ会えるんでしょ?会うんでしょ?だったらここになんている必要ないでしょ。私なんてどうでもいいじゃん。さっさと行っちゃえって話。あはは。」
ヘンなの、口は笑ってるのに涙がどんどん入ってきて塩辛い。
「なのに、バカ由良。自分は何様よ?こっちばっかり元鞘かどうかって責め立てて。自信があるんだかないんだかサッパリわかんない。バカじゃないの?」
掴んだ手を振り回す。振り回しながら、困ったような、でも何故かとても嬉しそうにも見える顔を見つめた。
やっぱり、
「綺麗…」
「今度は何?」
目をしばたいている。その瞳なんだって。
「由良の目。初めて見た時から大好き。視線がギュッとここに入ったの。」
振り回していた手をほどいて胸を叩いてみる。
「初めてって…もしかして六年前?」
頷く。こくこく。
「マジか…」
片手で口を覆ったまま固まっている。このマジか、は毒づきじゃないみたい。うふふ、嬉しいな。涙ももう乾いてる気がする。
「それだけじゃないんだよ、由良の声も。本当に真っすぐ。確かに耳に聞こえてるんだけど、直接心に響いた。なんか心で会話してるみたいで。」
ペラペラ、ふうわり。縛りがとれるってのもいいもんだな。アルコール万歳。
「一年目の時、うちに来たでしょ。あ、ちょっとマズいなって思った。でも勿論ひねりつぶしたけど。」
ひ、ひねり…?どうした由良、その面白い声は。動じないあんたが何でまだ固まってんのよ。
「うん、だって私女帝だよ?大所帯しきってかなきゃならないんだよ。責任ハンパない。自分一人の想いとか、そんなんいらな―」
え。背骨きしみそうなんだけど。
「あの、あんまりお腹押さないでくれる?」
ギョッとしたように身体を離される。クックッ。今日の由良ってば本当に面白い。
「大丈夫だよ、多分。そんなに飲んでないもん。ヴォミット(嘔吐)したりとかしないって。でも急性アルコール中毒になっても最高だよね、ERドクターがいるとかって。」
顔をまじまじと見られている。
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