3. 羊

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「何よ?」 「絵梨花はこれ、どのくらい明日覚えてるんだろう。」 「あんた、この私をバカにしてんの?消化器内科師長上島絵梨花っ、」 勢いをつけて立ち上がると、はいはい、そうだったそうだった、さ、行くよ、とベッドへと背中を押されている。一応薬飲んどくか、と手渡された錠剤を水で流し込んだ。 「あっ、」 今座ったベッドからまた勢いよく起き上がる。 「なに、どうした?」 今日は由良、よく驚くね。 「顔、メイク落とさないと。あと、歯、磨かなきゃ。」 ふわふわヨロヨロ洗面所にたどり着く。ゆらりと揺れながらもクレンジングオイルの大瓶を掴む。なじませて、っと。右に左に揺れながら顔を洗う。ローション、あ、でもこのところ乾燥してるからいきなりクリームの方がいいか。両手でちょっと温めてから塗るのがコツなんだよね。さあてと、お次は歯磨き。ああやっぱ、ミント気持ちいい。さっぱりするわ。おっとシャワー。そこで、慌てて入ってきたらしい手に止められる。 「止めとこう、今日は。そんなんで入ったら怪我するから。」 「んー、でもなんか気持ち悪い。」 「えっ。」 あはは、なにその間抜け顔、レア過ぎて笑えるんだけど。違うよ、吐く方じゃなくて何だか身体が気持ち悪いってこと。大丈夫、私滅多に吐かないからさ。 「滅多にって。」 「じゃあ由良一緒に入って。心配なら。ね?」 「マジか…」 今日何度目?っていうかなんか由良、語彙貧困になってない?マジか、ばっかり。変なの。そんなんじゃ患者さんとかご家族に状態説明するの、出来ないよ?あ、もしかして由良へたっぴいなの、お話しするの。ペラペラよくもまあ、自分でも驚く口の回転だ。 「どうなっても知らないよ。」 低い声出しちゃって。もしかして怒った?だって私、由良の働いてるところ、全然見らんないんだもん。本館とセンターって離れすぎだよねえ。
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