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「何よ?」
「絵梨花はこれ、どのくらい明日覚えてるんだろう。」
「あんた、この私をバカにしてんの?消化器内科師長上島絵梨花っ、」
勢いをつけて立ち上がると、はいはい、そうだったそうだった、さ、行くよ、とベッドへと背中を押されている。一応薬飲んどくか、と手渡された錠剤を水で流し込んだ。
「あっ、」
今座ったベッドからまた勢いよく起き上がる。
「なに、どうした?」
今日は由良、よく驚くね。
「顔、メイク落とさないと。あと、歯、磨かなきゃ。」
ふわふわヨロヨロ洗面所にたどり着く。ゆらりと揺れながらもクレンジングオイルの大瓶を掴む。なじませて、っと。右に左に揺れながら顔を洗う。ローション、あ、でもこのところ乾燥してるからいきなりクリームの方がいいか。両手でちょっと温めてから塗るのがコツなんだよね。さあてと、お次は歯磨き。ああやっぱ、ミント気持ちいい。さっぱりするわ。おっとシャワー。そこで、慌てて入ってきたらしい手に止められる。
「止めとこう、今日は。そんなんで入ったら怪我するから。」
「んー、でもなんか気持ち悪い。」
「えっ。」
あはは、なにその間抜け顔、レア過ぎて笑えるんだけど。違うよ、吐く方じゃなくて何だか身体が気持ち悪いってこと。大丈夫、私滅多に吐かないからさ。
「滅多にって。」
「じゃあ由良一緒に入って。心配なら。ね?」
「マジか…」
今日何度目?っていうかなんか由良、語彙貧困になってない?マジか、ばっかり。変なの。そんなんじゃ患者さんとかご家族に状態説明するの、出来ないよ?あ、もしかして由良へたっぴいなの、お話しするの。ペラペラよくもまあ、自分でも驚く口の回転だ。
「どうなっても知らないよ。」
低い声出しちゃって。もしかして怒った?だって私、由良の働いてるところ、全然見らんないんだもん。本館とセンターって離れすぎだよねえ。
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