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「私、無駄な自信がついた気がしちゃう。」
フッと笑った笑顔がカッコ良すぎるなんて。勝手に心が喚いている。少しお黙り。全く、柔らかくなっていいとお墨付きをもらった途端にこの騒ぎ様は何だ。手放しで好きだと、目の前の人を取り込んでしまいたいとうるさい。
「俺なんて天狗だけど?」
長い指が伸びて来て鼻を突つかれる。
「私の鼻、じゃないし。」
その指を捉えて唇にそっと押し当てる。
「よし、決めた。」
「え、何?」
私のいきなりの勢いに目が大きくなった。
「希彦の色香が天井知らずになるように内助の功する。」
は、えーと、何それ、イロカ?ないじょのこうする?さっぱりわかっていない顔を両手で包む。
「有名な由良ビームが、結婚したら倍では済まないくらい強力になるようにやっぱり幸せにしなくちゃ。うん、する。」
は、由良ビームって、と笑っている。そう、安心して笑っててね。大丈夫だから。
「あっ、」
「今度は何?」
「でもそしたら案の定モテちゃって収集つかなくなっちゃって、自業自得とかになるの、私?」
「絵梨花はモテる夫は嫌?」
口角が上がってる。
「否定しないし。」
ちょっと頬っぺたを引っ張った。あ、しまった。
「痛ぇっ。」
「ごめん、また忘れてた。男の人は頬っぺた硬いんだった。」
ペタペタ撫でる。
「モテる夫はいい。でも妬く妻に自分がなるのはなあ。」
ついボヤきが入る。
「妬く絵梨花、サイコーだけど?」
頬っぺたを撫でていた手を握られ甲に唇が押し当てられる。
「こういう時、同じ職場ってどうなんだろう。良いのか悪いのか。」
「何で?」
「モテ具合がつぶさにわかるのと、全然わからないのと。心の安寧具合、どっちが保てるんだろうなあ。」
「俺にとっては同じ職場一択だけどな。」
「?」
「思い立った時に顔が見られるから。」
そう言ってニッコリ笑うのは反則だと心がまたぞろ騒ぐ。ああもう、今日はおつむは留守にしよう。そして覆いかぶさることにしよう。
「また?」
「うん。」
「もう?」
「そう。」
黒い瞳が優しく緩んだ。
「お気の召すままに。愛してるよ、絵梨花。」
ー終―
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