1. 切り替える男、切り替え済み(と思われる)女

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1. 切り替える男、切り替え済み(と思われる)女

「その後どう?」 さつきがソファーにもたれかかってワイングラスをこちらに掲げた。 「乾杯。」 「何によ?」 「絵梨花(えりか)が嬉しそうなことに。」 「はあ?」 私の返事など聞いちゃいない。あ、これ美味しい、とかグラスを覗き込んでいる。 「で、どうなのお二人さんは。」 「お二人さんねえ。」 「そうよお。あの由良(ゆら)先生の彼女になってだいぶ経ったでしょうが。」 あの由良先生か。うん、まあそうだよね。 「いや…厄介。」 絞り出すように言うと、え?と、今度はグラスではなく私の目をじっと覗き込む。 「厄介?」 「そう、厄介。」 「ええと…どの辺りが?」 「正気が保ちにくい。」 「えっ?」 穴が開くほどというのはまさにこういう視線のことだろう。仕方無く私は説明し始めた。
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