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また夜が明けて
コルノは目を開いた。朝だ。ベッドの上で仰向けになっている。長く、恐ろしい夢から覚めたのだ。それにしても何とおぞましく、胸の騒ぐ夢だったことか。
ただ死闘を終えて身を清めた後、彼の胸に飛び込んできた姫君と情熱的に愛し合ったことは、これまでの人生で見た夢の中でも最高と呼べるものだった。
「夢の中とはいえ、この腕に姫を抱くとは。よほどあの方のことが好きなのだな、俺は」
枕元で、風が動いた。
「私を呼びました? コルノ」
彼は呼吸を忘れた。目の前に、大理石の女神像ではないかと思われるほど顔立ちの整った、色白の顔が突き出されたからだ。
声の主は、彼が夢に見るほど憧れている、この国の王女にして「神の愛を拒み続ける乙女」こと、ブランカ姫その人であった。
目を細めて彼を見下ろす彼女の瞳は、果てしなく続く時間を閉じ込めた、黒曜石のように煌めいていた。
(了)
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