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 最近、バイト先で真と話すのが楽しい。  授業がほとんど無い関係上、真は平日の昼間にバイトに来ており、弥生とシフトが被る。昼の休憩の終わりの部分が重なるので、日に10分程度だが休憩室で一緒になる。  その間に話すのが楽しいのだ。  彼はあまり話さず、ほとんど弥生が話していた。  他愛の無い話題を、真はうんうんと頷いて聞いてくれる。時折「つまらなくない?」と聞いても「大丈夫です、高村さんのお話面白いですよ」と言ってくれる。どうせお世辞だろう、だけど、聞いてくれるのがとても嬉しかった。  今日も弥生と真は休憩室で話をしていた。 「最近、娘のスマホの使用料が多くてね、この前なんか三万円よ!怒れてきちゃって『解約するわよ』って言ったら、泣きそうな顔するから許してあげたけど、どうして最近の子ってあんなにスマホに依存するのかしらね、よくわかんないわ」 「三万円ですか、多いですね。僕の五倍はありますよ」 「ええっ、私なんか多くても五千円くらいよ?何に使うの?電話?それともメール?」 「いや、インターネットにどれだけ繋げても一定の料金しか払わなくて済むプランにしてるんで、基本料金が高いだけです。メールも電話もほとんどしませんね」 「へえ……、インターネットね。私、そこら辺よくわからないのよ。旦那が最近出た機種にして喜んでたけど、全然分からなかったわ」 「それ、僕も持ってますよ。これですよね?」 そう言って真が出してきたのは、最近洋介が購入した機種の色違いのものだった。 「ああ、これこれ。まあ、私はよくわかんないから、大分前に買った機種のままだけど」 そう言って弥生の出してきたスマホは、所々で色の剥げ始めた四年前の機種だった。 「へえ。でも機能ありすぎても使いませんし、今ので問題なければ……」 「そうよね」 「そういえば、高村さんに僕の番号を教えてましたっけ?」 「うーんと……、どうだったかしら」  弥生が不慣れな手つきでスマホの『い行』を見ると、そこに真の名前は無かった。 「やっぱり、無いみたい」 「じゃあ、番号交換しましょう。何かあった時の為に」 「ええ、そうね」  真は自分の番号を手早く表示させると、弥生に見せた。 「えーと、ちょっと待ってね……。いぐに……、あー、もう、漢字出てこない!『真君』で良いかしら?」 「構いませんよ」  暫くして、お互いの番号は交換された。  弥生は『真君』で登録されたところを見返す。  登録し終った後、真が『いつでも気軽に連絡下さい』と言った声が、脳内で甘く響く。  ただの社交辞令だと分かっているのに、何故だか胸の鼓動が早くなる。脳内で響く真の声は、なお反響して大きくなる。  無視できないぐらいに。
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