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家に帰り夕食を作っていると、机の上にあるスマホが震えた。
からあげを作っている最中で、手が離せない。
メッセージか電話かの区別がつかないので、少し焦ったが、二回震えて止まったので、メッセージだと確信した。
壁掛けの時計を見上げると、夕方の六時を半を少し過ぎた頃だった。多分、洋介からのメッセージだろうと思い、そのままにしておいた。
玄関の開く音がして、美樹の声が聞こえた。
「ただいま」
「おかえり」
天ぷら鍋を見ながらそう応える。
「ほんと、今日も参っちゃうよ」
いつもの口癖が始まった。このまま聞けば美樹は三十分はこの場所から動かない。
「はいはい、聞いてあげるから先ずは手洗いうがいと、着替え」
「へいへ~い」
顔を見なくても、美樹が口を尖らせて不満顔をしていることが分かる。
からあげを取り皿に移しながら、鼻歌を歌う。
「ねえ、ママ。メッセージ来てるよ」
「うん、知ってるわ」
「パパからじゃない?見てあげようか」
『お願い』と言いかけて、止めた。
今来たメッセージは、本当に洋介からのメッセージだろうか。
今日昼の休憩で真と話した時に彼は「じゃあ、後で確認のメッセージしますね」と言っていた。でも、今の今まで来ていない。
もしかしたら、今来たメッセージは真からのメッセージかもしれない。
そう思うと、誰にも見られたくなかった。
別にやましい関係ではないのに、何だか誰にも触れて欲しくなかった。
「自分で確認するわよ。ほら、それよりも早く着替えてきなさい」
半ば無理矢理美樹を追い出すと、弥生は今着ているエプロンのポケットにスマホを滑り込ませた。
このメッセージが真からのメッセージであればいいなと、願いながら。
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