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 美樹が部屋に着替えに行くのを見計らって、夕食の準備の手を止メッセージと、エプロンからスマホを取り出した。  折りたたみのスマホを広げると、そこには『メッセージ着信あり』と表示されていた。  メッセージの絵が書いてあるボタンを押し、メッセージの受信箱を呼び出す。  そこに表示されたのは、洋介の名前だった。 『今日、帰りは遅くなる』  いつもの簡素なメッセージの筈を読みながら、深い溜息をついた。  自分がついた深い溜息に弥生は驚いた。  なんで私は残念そうに溜息をついたのだろう。ただ、真からのメッセージが来ないだけで何でこんなに気にしてしまうのだろう。  出てくる疑問の答えが出なくて、何だか不思議だった。  もう一度溜息をつき、スマホを閉じてエプロンのポケットに入れようとした時に、またスマホが震えた。  確認しようと受信箱を開く。 『真君』 という文字を見た瞬間に、息が詰まった。  先程まであった沈んだ感情が急に浮かび上がりすぎて、体がついていけなかった。  メッセージには『郁仁真です。確認の為にメッセージしました。これからもよろしくお願いします』とだけしか書かれていないにも関わらず『嬉しい』という感情が胸の中を甘く染めた。 『メッセージちゃんと届きました。こちらこそ、よろしくお願いします』 と書いて、メッセージを返信してスマホをポケットの中に入れる。 「ママ、今日のご飯何?」  急に後ろから声を掛けられて吃驚した弥生が振り向く。 「ビックリした、美樹、いつからそこに居たの?」 「今来たばかりよ。あれ、ママ、顔赤いよ?」  頬に手を当てると、何だか熱い。  胸の中にあった感情が、胸の中だけに留まらず、頬から噴き出しているかのようだった。 「からあげ、作ってたからね。熱いのよ」 「本当?パパからのメッセージ見て赤くなったんじゃないの~?」  からかう様にそう言って悪戯っぽく微笑む美樹に「そんなわけないわよ」と答え、盛り付け終えた夕食を机へと運ぶ。 「ふーん。それより聞いてよ、ほんと参っちゃうよ。先輩がさ……」  美樹の話にうんうんと頷きながら、夕食の皿を並べる。  いつまで経っても引かない頬の熱を美樹に見られていると思うと、何だか恥ずかしかった。
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