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「旦那様と同じ機種なんてどうでしょう?」  ショップの店員にそう言われ、驚いた。  なんでこの店員が洋介のことを知っているのだろう。  くるくるしたパーマを当てている店員の顔を見ながら、弥生は自分の頭の中の記憶を探る。  しかし、該当者が居ない。  首を傾げていると、店員が隣へ視線を移した。 「旦那様の機種、最近出たばかりのものですよね」  旦那と間違われていたのは、真だった。  目を丸くさせた真は「違いますよ」と言って笑った。店員は「失礼しました!」と言い、マズい事を言った、という表情を一瞬見せた後、直ぐにその顔を作り笑顔で塗りつぶした。 「こんな若い子と付き合えるなら、嬉しいわよ」  つい口をつついて出た言葉に、ハッとする。  内に秘めている思いが、少しだけ言葉になって漏れ出してしまったようだ。  弥生は伸びをするフリをして、真へと視線を移す。  薄桃色の頬が、こちらを見ていた。
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