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 洋介は、セックスをする前には酒類を口にしないことにしている。  風呂上りの一杯の酒を楽しみにしているが、どうしてもセックスとアルコールの相性が良くないのだ。  今酒を飲んでセックスをしようとしても、酒の所為で勃起出来ないので行為に至れないのも理由としてある。  でも、それだけが理由ではない。  若い頃は酒を飲んでから行為に至った方が良かったぐらいで、最初に付き合っていた女とのセックスではほぼ酒を飲んでからしていた。だが、酒の勢いに任せてセックスに至るので、大事なことを忘れるのだ。つまるところ、コンドームをせずにそのまま行為に至るのだ。でも、ほとんどの場合は女が嫌がって半ば無理矢理にコンドームを着けさせるので、問題は無かった。  けれど、双方が酒を飲んだ時によくそれは起こった。  何も付けずにして、朝を迎えてオロオロするのだ。  その後彼女の生理が来るまでは針の筵の上に座っているかのようで、嫌だった。  最初の女との別れの原因が「それ」の所為だとは思いたくないが、遠因ではあるのだろう。  それから洋介は酒を飲んでのセックスはしなくなった。  だが、大学四年生の十二月。  弥生が忘年会で呑み過ぎた洋介を借りているアパートまで運んだ。  弥生も大学生活最後の忘年会で珍しく酒を飲んでいて、気分が良かった。  二人は意味も無く笑い合い、千鳥足で家の中まで入ると、すぐさまベッドに横になった。  最初はベッドの上でいつもは言わないようなクサイ台詞を言っては笑い、言っては笑いを繰り返し、合間合間にキスをした。最初、児戯のようなキスだったのが、唇を合わせるごとに成長して、大人のキスになった。  笑い声はいつの間にか、なりを潜めて互いの唇を吸いあう音だけが部屋に響き始めた。  洋介が唇を離すと、少しふざける様に弥生が舌を出した。洋介は弥生の舌先と自分の舌先を合わせた後、舌の先で舌の平へとなぞる様に上がり、上唇を少し舐めた後、口に含んだ。唇の裏側を舌で撫でると、弥生が淡い吐息を吐いた。カシスの匂いが鼻腔をくすぐる。忘年会で呑んだ、チューハイの匂いだった。  口に含んだ唇をそのままにして、洋介が服の上から乳房を揉み始めると弥生の吐息が少しだけ荒くなり始めた。しばらくして、乳房を揉んでいる両手を少し離して人差し指だけを当てて、弧を描くように乳房を探ると、一点だけ弥生の吐息があえぎ声に変わる場所があった。その場所を指で何度も往復し、波を聞くようにその吐息を楽しんでいると、弥生が洋介の頭を両腕で抱きしめた。 「いじわるしないでよう……」  そう呟いてキスをしてきた弥生が、舌を入れる。カシスの匂いに包まれながら、洋介は自分の意識がどこかへ飛んでいくのを感じた。その場所が既知の場所だということは、ぼんやりと気付いてた。
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