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「へえ、良かったじゃん、友哉」
「同級生だってさ」
「そっか。なんか浮かれてる顔が浮かぶね」
真羽はそう言いながらも素直に喜べない自分がいることに、心の端がずきずきと痛んだ。
直人と友哉とは、幼稚園が同じだった。
母親同士が仲良くなったのをきっかけに、母親に連れられて互いの家を行き来するようになり、顔を合わせるごとに親しくなっていった。
昔から直人の横にはいつも友哉がいてそれが当たり前の風景だったから、いないことが不自然に思えたりする。そしてこうして直人と会っていても無意識に彼の横に友哉の姿を探してしまう。
街を歩いていても、友哉が関心を示しそうな物を見ると、友哉だったらどんなリアクションをするだろうとつい思ってしまう。
いつも友哉が馬鹿なことを言って直人がそれに突込みを入れる。それを見て真羽が大笑いする。それが中学まであたりまえの日常だったから、友哉がいないこの風景が少し物足りなく思えてしかたなかった。
メロンパンは、美味しいはずなのに、素直に味を楽しむことさえ出来なかった――。
(三)
「そっかあ」
萌音は箸を置き、腕組みをして椅子の背にもたれかかった。
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