まるでクレオパトラのような恋

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 受け取って、真羽も鞄から萌音に渡すチョコを取り出し手渡すと、彼女は礼を言って受け取りながら、 「それ、なに?」  鞄の奥を指差した。 「ああ、これはなんとなく、作り過ぎたから」  実はもう一つ、作ってしまったのだ。  別に作るつもりはなかったのだが、なんとなく作ってしまった。  というのもここ数日、成見が亜由美とイチャイチャしている姿が目に付いてしかたなかったのだ。  ほかの男ならば、なにをしようが一切気にならないのに、成見に限って気になる自分が嫌だった。  いや、認めたくなかった、自分の気持ちを。  それでもこの機会に意思表示くらいはしてみたい。  たとえ「そんなもん、いらねーよ」と言われようと、それはそれで冗談だと言って笑ってすませればいい。  真羽はそう思い、もう一つ用意したのだ。萌音のものと少し味を変えて。  萌音は声を弾ませて、 「もしかして、それ、成見の?」  直球を投げ掛けて来た。  どうも彼女には、真羽の心を見透かされているらしい。だが真羽は、 「成見は関係ないでしょ」  とっさにそう言ってしまった。やはり本当のことはなかなか言えない。  「え? 違うの?」
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