まるでクレオパトラのような恋

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 なんだか萌音が、いつの間にか成見化しているような気がした。からかわれると過剰に反応する真羽を、完全に面白がっている気がする。  “あく”が強い成見は、人に伝染するのだろうか。 「違うに決まってるでしょ! 本当にちょっと多く作り過ぎたから、もう一つ用意しただけで……」 「じゃあ、誰にあげるの?」 「それは……」  本当のことがなかなか素直に言えない真羽を見かねてか、萌音は後ろの席にいる成見に向かって言った。 「成見、真羽がチョコくれるって!」  やはり面白がっている。 「萌音ちゃん、だから違うって」  後ろで成見は、 「もう、ここにあんだけど」  その言葉に振り向くと、机の上にそれらしい箱が置いてあった。萌音はつまらなそうに、 「ああ、例の彼女ね。でもバレンタインなんて、いくつもらったっていいじゃない」 「いらねえよ、そんなに」 「なんで? 真羽の手作りだよ」 「そんなもん、腹こわすに決まってんだろ」 「ちょっと、なんてこと言うのよ」  この発言には真羽もさすがに切れた。 「いいよ、萌音ちゃん、もうやめて」
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