まるでクレオパトラのような恋

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 そして袋を取り出し、思い切って中を開け中身を取り出した。やはり作らなければよかったと後悔する。これ以上いたずらにからかわれるのは嫌だった。向かいの萌音は、 「ちょっと真羽、なにしてるの?」  驚いた様子で目を見開いている。 「お腹こわすわけないって、証明してやるの」  腹立ち紛れに、怒りに任せて一口齧る。手作りのブラウニーだ。すると萌音は手を伸ばし、 「じゃあ私にも、頂戴!」  口を大きく開け一口で食べ切ってしまった。 「どう? 味は」  一応試食して来てはいるものの、やはり人に食べてもらう時には緊張する。 「うん。美味しい!」  萌音は、「もう一個頂戴ね」と今度は少し齧って、 「甘さ控えめだね。それにちょっとビターな感じ?」  感想をくれた。 「ねっ。大丈夫でしょ」  後ろの成見に聞こえるように言うと彼は、 「ばーか、後でトイレに駆け込むことになるんだよ」  憎たらしいことばかり言うので、もはやあんなやつにあげようなどとは思わなくなった。  結局、萌音と二人で食べ切り、成見の口に入ることはなかった――。   (二)  
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