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「ばか、一応あんたを信用してるからに決まってるでしょ。この間だってなにもなかったし」
「この間は、弱ってたんだよ」
「クラスメイトでしょ。もう、いい加減にしてよ」
きつく睨みつけ、帰ろうとすると、
「おまえ、おれが好きでもない女に、今みたいなこと、すると思うか?」
その言葉に、真羽は動きを止めた。
振り返り、成見を見上げる。
「どういう意味よ」
「そういう意味だよ」
成見は間髪入れず腕を掴み、そのまま真羽を奥に引き入れた。
「ちょっと、待ってよ」
抗うが、力では叶わない。
真羽は頭が混乱しながらも、なぜか足は動きを止めようとしなかった。
靴を履いたままだ。それでも彼は構わず先を行く。
「ちょっと、本当に……待って成見、お願い」
声を落とすと、ようやく彼は立ち止まった。
「往生際が悪いな」
「嫌いなの。成見なんて」
「そっか……」
彼は呟くと、急に手の力を緩めた。「じゃあ、帰れよ」掴んでいた腕を離される。
本当に成見は、やることが滅茶苦茶だ。
真羽は下を向いたまま、黙り込んでしまった。
「悪かったな。嫌いなら、なにもしねえよ」
成見はそのまま近くの壁にもたれた。
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