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少し体を離し「ごめんね」謝ると彼は、あからさまに肩を落とし、
「なんだよ、しょうがねえなあ」
取り敢えず今は、我慢してくれたようだった。
真羽は、この先もう少しだけ、彼を知りたいと思った。
九
この頃次第に暖かくなり、厚いコートもいらなくなった。
春めいた暖色系のコーディネートに身を包んだ真羽は、成見と街中を歩きながら、そっと腕に手を絡ませた。
彼はされるがまま、真羽に歩調を合わせてくれている。
特にこれといって会話はないが、それがかえって真羽は心地よかったりする。
それでも一応、成見は成見なわけで、
「なあ、いつ、おれんちに来るんだよ」
と突然言い出す。
「だーかーらー。まだ心の準備が出来てないの。もう少し待ってって言ってるでしょ!」
「待てねーよ」
「もう、成見のバカ、エッチ、アホ、変態」
「うるせーな」
もう、会う度に繰り返されるやりとりだ。
真羽は、こういうことだけは、慎重に時期を選びたかった。
萌音は、やはりあの時わざとスマホを取り換えたのだと白状した。
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