まるでクレオパトラのような恋

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 一 (一) ――はあ……。  真羽が深い溜息を吐くと、向かいの席で弁当を食べる萌音が、 「どうしたの? 真羽。嫌いな食べ物でも入ってた?」  ミートボールを口に運んだ。 「ううん。違う」  真羽は力なく首を横に振った。  萌音は真羽と背格好が似ており、ショートヘアが良く似合う。真羽は高校生になっても、中学の時と変わらずに長い髪を一つに結んでいるが、大人っぽい雰囲気の彼女を羨ましく思う。もし自分も、彼女のようにショートにしたら、ただでさえ童顔なのに更に子どもっぽく見られそうで出来ない。 「具合でも悪いの?」  萌音が心配そうに顔を覗き込む。 「いや、そういうわけじゃなくて」 (二)  先日、幼馴染の直人と駅前に新しく出来たメロンパン専門店で、香ばしく甘い香りに待ちきれない思いで行列に並んでいると、 「そういえば友哉、彼女出来たって」  ふいに、直人が思い出したかのように言った。
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