46億年分のふたり

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「⋯⋯管理官がおっしゃっていた、もう一つの選択肢を選ばせてください」  心の奥までも全てを見透かしてしまいそうな目で管理官は俺を見ていたが、突然、ふふっと吹き出す。 「えっ、あの⋯⋯」 「いや、ごめんごめん。お前があまりにも思った通りの選択肢を選んできたからさ」 「それならなぜ、この話を私に?」 「迷いが見えたんだよ。管理官に推薦するぐらいだ、良くやってくれているのは分かっている。お前の覚悟を確認したかったんだ」 「⋯⋯すみません」 「あぁ、気にするな。お前の人生だ。しかし本当にそれでいいんだな」 「はい」 「分かった。まぁ本音を言えば、優秀な部下を手放すのは非常に残念だが」 「これまで、ありがとうございました」 「この選択肢の執行は今晩の0時。明日からお前はこの時代の人間となる。それに伴い、未来に関することやこの任務についての全て記憶を消去する。もう二度と元の時代に戻る事はできない。お前の仕事の引き継ぎは秘密保持のためにこちらで行う。以上。」 「⋯⋯はい」 「しっかりしろ! 彼女を幸せにするんだろ! ⋯⋯これは、お前をずっと見てきた年長者としての言葉だ」 「あっ⋯⋯ありがとうございます。お世話になりました!」  管理官に頭を深く下げると、頬を伝う涙の感触を感じた。
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