46億年分のふたり

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 この時代に来て5年。  何かと不便なここでの暮らしにもようやく慣れたが、唯一、満員電車だけは苦痛だった。  狭い車内で誰かの足を踏んでしまうくらいの人口密度。あの文化だけはいただけない。  ここを任されるという辞令が下りたのは、仕事を始めてから3年目の春。まだ新人の部類に入る俺にとって、このポストは大抜擢だった。  直前の大きな案件で成果を残した結果の異動だったから、さらなる結果を求められていることも分かっていた。  ――俺の仕事は、過去の時間の歪む場所を特定したり、その原因となるものを排除すること。  数十年先の未来の国家機関として存在する特殊組織に所属している。   この時代は未曾有の災害や未知なる病の発生も多く、不安を抱える人々の心の隙間は、よからぬ事を企む人間にとって格好のターゲットになりかねない。  そいつらの目的は、たいてい金だ。  過去の情報を操作して、ある業種に利得を集中させようって魂胆。  人の欲はいつの世も変わらない。  私利私欲しかないやつらが手段を選ばずに汚いことをしているから、その手先となって悪事を働くやつらも存在してしまう。  だからこの辺りの年代は「平和安全保持重要時代」に指定され、特に厳しい取締りが行われている。
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