46億年分のふたり

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――管理官、お呼びでしょうか。 ――あぁ、そこに座ってくれ。 ――はい。失礼します。  何かの通達の予感を感じながら、管理官の向かい――大きな革張りのソファに腰を掛ける。 ――土村はこの仕事を始めて何年目だったか。 ――8年です。 ――そうか。もうそんなになるか。実は、お前に考えてほしい別件があるんだが。 ――別件ですか。危険な案件でしょうか。 ――いや、1940年代の管理官の異動が決まったんだが、後任を選べと上から言われていてな。血気盛んで優秀な人物が求められているんだが、俺は土村が適任だと思っている。お前、やってみないか? ――その時代はまだ第二次世界大戦中ですね。 ――その若さで管理官は、異例の出世だぞ。でもお前ならやれると思っている。  正直、今の俺にとって勿体ない話だった。  だが人の上に立つには経験も浅いし、まだまだ現場で働きたい気持ちもある。しかしまたとないキャリアのチャンスかもしれない。  管理官には少し考えさせてほしいと伝えた。
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