46億年分のふたり

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 俺と夕貴にとっての5年間の長さは、知り合った日が昨日に思えるほど短くもあり、太古の昔にひとつの身体だったんじゃないかと思えるほど長い時間だったようにも思える。  だんだんと自分自身が未来の人間だということを忘れてしまう瞬間が増えつつあることも自覚していた。  そんな時こそ、俺の「リアル」はここにはないんだという虚しさが込み上げてくる。 ――ここに見える全ては、俺にとって虚構でしかないのだと。  なるべく気持ちが引っ張られないように、常に自分軸を意識して過ごしてきたつもりだ。  だが改めて、彼女の中から俺とのこれまでの記憶が消えてしまうことを考えたら、震えるほど恐ろしくなった。そして俺の中にいる彼女の存在の大きさを嫌というほどに知った。  どんなに頭で理解しようとしても、心がシクシクと(うず)いて息苦しくなった。  当たり前のものなど、何ひとつなかったんだ。
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