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「おはよう~婚前旅行から帰ってきたところ悪いけど四月からの新入社員研修の再確認よろしく!パワーポイントでまとめているから見ておいてくれる?」
「…おはよう。あ、わかった…見ておく」
出社すると隣の席の沼口夏子が椅子の背もたれに背中を全力で預けながら疲れた様子で声を掛けてきた。
彼女とは半年前から同じ部署で働いている。
パーマのかかったゆるふわな髪型とは対照的に結構きつい性格をしているから合う人と合わない人がはっきりしている。
小ぶりのピアスを揺らして首を傾げる夏子は私の異変に気が付いたようだ。
「どうかしたの?」
「あぁ、うん…えっと」
何と言おうか迷っていると、背後から可愛らしい声が聞こえる。
「おはようございます!」
「おはよー」
夏子が一瞥して適当に返事をした相手は藤沢千佳だった。
夏子は千佳のことをあまり好いていない。
内巻きにワンカールした甘栗色のボブヘアは彼女の雰囲気にとても似合っている。華奢で守ってあげたくなるようなオーラを放つ彼女を今日は直視できなかった。
大きな目に、長いまつ毛、そしてぽってりとした唇はそれだけで男性が簡単に落ちてしまいそうだ。
そう、孝太郎も。
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