第五章 OVER【七宮月子】

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あの子も、こんな風に、驚いたのかしら。 ひとつ、忘れていたわ。 貴女が愛していたのは、あの子でしょうけれど、 憎んでいたのは、本当は、誰? あの子だけでは、ないのではなくて? 常に、あの子と共にいる私にこそ、嫉妬を覚えていたのではなくて? 私さえいなければ、もしかしたらあの子は、貴女を一番にしてくれたかもしれないと、思ったことはなくて? ……答えは、要らないわ。 興味がないもの。 それに、例え私がいなくても、貴女があの子の一番になれたとは、到底思えない。 貴女には、それが何故かわかるかしら? もしわかるのなら、可能性はあったのかもしれないけれど……何れにしても、今となっては、どうでもいい、仮定の話ですわね。 それでは、私は、失礼するわ。 貴女には届かない、向こう側へ。 あの子の側へ、逝かせて頂きます。 あぁ、風が、強くなってきましたわね。 これなら、すぐに、届きそうだわ。 私の半身、あの子の元へ。 ごきげんよう、貴女。 貴女の未来が、少しでもマシになるように、時々は、祈ってさしあげますわね。 あぁ、風が、強く吹いているわ。 あの日と同じ、ね。 風が、強く、吹いているわ…… 『M女学園の生徒、今度は飛び降り 事故か自殺か、割れる見解』 -新聞Aの見出しより-
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