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プロローグ
わたしは公園のベンチに座り泣いていた。
そんなわたしに見知らぬおばさんが手を差し伸べてくれた。
「お嬢さんお腹が空いているのかな?」
優しいその声にわたしは顔を上げた。すると、柔らかな笑みを浮かべたおばさんがわたしの顔を覗き込んでいた。
「あ、うん。お母さんが帰ってこなくてお腹が空いちゃったよ」
わたしが手の甲で涙を拭いながら答えるとそのおばさんは、
「あらあら、それは困ったわね。じゃあ、おばさんの食堂にいらっしゃい」
「え? いいの?」
「うふふ、もちろんよ。ご馳走しちゃうわよ」
おばさんはニコニコと笑いながら手を差し出した。わたしは差し出されたその手をぎゅっと掴んだ。手の温もりがじわりと伝わってきてこのおばさんはいい人だなと感じた。
食堂に着くと、そのおばさんが「沖縄ちゃんぽんよ。食べてね」と言って食べさせてくれた。
「おばさん、この沖縄ちゃんぽん美味しいね。だけど、ちゃんぽんなのに麺じゃないんだね」
「うふふ、沖縄のちゃんぽんは麺じゃなくてご飯なのよ。野菜やお肉などを炒め合わせて卵でとじたものをご飯に載せた料理なのよ」
そう言ってニコニコと笑うおばさんの顔は優しくてなんだか癒された。
こんな人がお母さんだったら良かったのになと思った。
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