好き勝手にするって、どういうこと?

1/18
前へ
/240ページ
次へ

好き勝手にするって、どういうこと?

森山は自分の好きにすると言いながら、結局いつもと同じように、ただ私の隣でくだらない話をしているだけだ。 今までと何も変わっていないと笑ったら、彼は「春ちゃんのしたいことが俺のしたいこと、みたいなところあるからね」とふざけていた。 森山は私の特別でなくともいいと言った。 愛だとも恋だとも言わずに、ただそばにある。一緒に居ればいいと言ってくれた。 その森山が、唯一やめてほしいと言った縁談の場に、今私は来てしまっている。 「春、久しぶりね」 三年間、こうして見合いの場だけで母と再会していた。 料亭の控室で母と二人、冬の庭を眺めながらぽつぽつと会話を続けている。 今日も私の前で、母は笑っていた。 寂しそうな笑顔だと気づいていても、母が何も言わないから、知らないふりをし続けてきていた。 家に戻ってきてほしいと言うのなら、こう言い返そうとずっと前から決めている言葉があるのに、母が何も言ってくれないから私も口には出せず、ここまで長々と回り道を続けている。 「久しぶり、お母さん」 「少し痩せたんじゃないの?」 「あはは、ううん。どうかな、いつも通りだと思うけど」 嘘だ。実家のように毎日豪勢な和食が出るわけでもないし、仕事が忙しければお昼を抜いてしまうこともある。同居している森山にも、自分自身にもわからないようなことが母に見抜かれた。おかしなものだと思う。 「そう……。ご飯、ちゃんと食べるのよ」 「そうだね、抜かないように気を付ける」 「三食しっかりね。春は昔っから少食なんだから」 「そうかなあ」
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2920人が本棚に入れています
本棚に追加