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好き勝手にするって、どういうこと?
森山は自分の好きにすると言いながら、結局いつもと同じように、ただ私の隣でくだらない話をしているだけだ。
今までと何も変わっていないと笑ったら、彼は「春ちゃんのしたいことが俺のしたいこと、みたいなところあるからね」とふざけていた。
森山は私の特別でなくともいいと言った。
愛だとも恋だとも言わずに、ただそばにある。一緒に居ればいいと言ってくれた。
その森山が、唯一やめてほしいと言った縁談の場に、今私は来てしまっている。
「春、久しぶりね」
三年間、こうして見合いの場だけで母と再会していた。
料亭の控室で母と二人、冬の庭を眺めながらぽつぽつと会話を続けている。
今日も私の前で、母は笑っていた。
寂しそうな笑顔だと気づいていても、母が何も言わないから、知らないふりをし続けてきていた。
家に戻ってきてほしいと言うのなら、こう言い返そうとずっと前から決めている言葉があるのに、母が何も言ってくれないから私も口には出せず、ここまで長々と回り道を続けている。
「久しぶり、お母さん」
「少し痩せたんじゃないの?」
「あはは、ううん。どうかな、いつも通りだと思うけど」
嘘だ。実家のように毎日豪勢な和食が出るわけでもないし、仕事が忙しければお昼を抜いてしまうこともある。同居している森山にも、自分自身にもわからないようなことが母に見抜かれた。おかしなものだと思う。
「そう……。ご飯、ちゃんと食べるのよ」
「そうだね、抜かないように気を付ける」
「三食しっかりね。春は昔っから少食なんだから」
「そうかなあ」
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