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「私とキスとか、できるのかな。ともちゃん」
酔っ払いの戯言だと思われなければ良い、と思っている。キスがしたいじゃなくて、森山がしたいと思ってくれているなら差し出してしまいたいという曖昧な感情だった。
やっぱり愛じゃないのかもしれない。この人の子どもを産みたいとか、独占したいとか、そういう感情ではなかった。
「は、やっていいのかよ」
「……とりあえずやってみる、精神?」
「……今回はもうやんねーよ、とは、言わないけど、いいんですか、春ちゃん」
でも、今ここで、何度も私の心を確認しようとする不器用な森山の本心が知りたいと思う気持ちは本物で、森山になら捧げても良いと思うのも、ずっと変わらない。
「あの日も別に、してよかった、と、思う、気がする」
初めてそのことを口にしたとき、森山は呆然としているような、でも少し嬉しそうな、はにかんだ笑みを見せてくれた。
「気がする、かよ」
気がするんだよ。ずっと、できるような気がする。
それが恋じゃなくても、愛とは違っても、今、私の頬に触れて私を見おろす森山がこれで良いと思ってくれているのなら、それが私たちの正解でもいい。
あなたの生きたいように生きてほしい。きっとあなたも私にそう思ってくれている。それならもう、私たちは、お互いにどうありたいのか、言葉を隠す必要もない。
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