好き勝手にするって、どういうこと?

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「破談にしてください。……帰ります。ごきげんよう」 「は、まってください、何が」 くるりと踵を返して立ち去ろうとしたのに、後ろから腕を掴まれて立ち止まった。遠慮のない力に顔を顰めても、必死になっているらしい相手は気づかない。 「僕の何が悪かったんですか」 「放してください」 早口でまくしたてられて、震える手に力をこめる。 男の力には敵わない。 振り返った先に立つ男は、どことなく目が血走っているように見えた。 森山の言った通り、一度断られた縁談に来るような人は、相手にするべきではなかった。今更思っても、後の祭りだ。 助けを呼ぶのが苦手だ。 最近気づいたから、対処法なんて、一つしか考えていなかった。そばにいてよ、隣に居てほしい。ただそれだけを口にした。だけど、自分から離れていたら、意味がない。 「僕がどれだけの間あなたを思ってきたか、あなたは――」 「――え、何かクソ野郎に女の子襲われてんだけど。コワ。治安悪いな、この店」 どうなってんだよ、と続けたその男の声で、私を掴んでいた手が離れる。 顔をあげれば、礼装のような背広を着た男と、背の高い着物姿の人が立っていた。見覚えのある顔に、ぎょっとして立ち尽くす。 「なんだ君たちは、僕たちは――」 「クソ男が。私が相手してやる」 「り……っ、ひ」 凛、と呼ぼうとした声が喉元で擦り切れて消えた。
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