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「ともちゃん、やめて」
「外の寒さを共有したかったんだよ」
「しなくてよい」
「うぃーす」
子どものような遊びをしてくる。
森山智和は中学まで同じ学校に通っていた、いわゆる幼馴染のような関係性の男だ。
しかし、その定義で当てはめようとすると、この田舎に住む同級生たちは全員幼馴染であるということになる。そういう枠で考えれば、私と彼の関係性はごくありふれた、旧知の友人とするのが妥当だ。
「で、ケッコンね」
私たちが二十七歳にもなって、男女で同居しているということ以外は。
森山の緩急のついた話題の提示が、実のところ少し苦手だ。苦手というより、彼と比較すると、その部分の能力が劣っていることを十分に自覚しているから避けて通りたい。この男は何が楽しくて、帰宅早々に訳の分からない提案をしているのか。
「春ちゃん、びっくりした?」
「うん、してるよ、今も心臓ばくばくしてる。ともちゃんの考えがわからなくて」
「ええー? いや、だって春ちゃん、困ってんでしょ? まあ俺らもいい歳だし、そりゃ周りにも結婚相手がどうこうせっつかれて当然だわな」
「いや、まあ、それはただの愚痴じゃん」
「じゃあ、俺のもただの提案ってことで良くね? 俺の配偶者欄は今空っぽだし、春ちゃんが良いなら、結婚するかってだけ」
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