ドラマは炬燵で始まりますか?

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ドラマは炬燵で始まりますか?

「てか、じゃあ俺と結婚する?」 物語の序章は、常に青天の霹靂から始まっているような気がする。 私の物語の序章が果たしてどこにあるのかは別として、確かに私は同居人――それも生物学上は雄とされている人間から、あっさりとプロポーズまがいの言葉を投げかけられ、現在炬燵(こたつ)で唖然としている。 「結婚」 「そう」 「誰と」 「春ちゃんと」 「私と……誰が?」 「えっ、俺以外に誰かいた?」 「いや」 いない。というか、誰ともそのような話を打診される関係性を築いている記憶がない。 なおも呆然とし続ける私を見おろした男は、なぜか楽しそうに唇に弧を描いて上着を脱いだ。 「つか寒いね~」 気軽なコミュニケーションに、気圧されて頷く。 確かに寒かった。海が近いこの町は、潮風が凍る。雪が降ることは多くないが、それでも室内と外の気温差が15度以上になることもある。特に私の同居人はとりわけ寒さに弱い質で、この家の設定温度は比較的高めだ。 最近のお気に入りらしいグレーのコートをハンガーにかけた男が、猫のように身体を縮めて炬燵に入り込んでくる。 「足つめてー」 「ぎゃっ、冷た!」 わざわざ炬燵の中で靴下を脱いだらしい男が、ご丁寧に私の素足に爪先を押し付けてくる。 冷え性男の馬鹿馬鹿しい遊びに大げさな反応をしてしまった。思わず、斜め前に座る彼の顔を睨みつける。
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