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マンションの屋上から夜空を見上げた。深い藍色で、どこまでも高い夜空には満天の星が散っている。
「……綺麗だ」
僕はゴロンと床に転がった。ひんやりとした硬い床の感触が背骨に当たって少し痛いが、大したことはない。
夜空との距離が少し離れたが、美しさは変わらない。群青色の空から輝く無数の光。重力に逆らって星に引き寄せられる感じだ。圧倒されるあまり、頭がクラクラする。
「……今日で、この空ともお別れか」
僕は、ゴミらしい。クズとも言われ、奪われたノートにはご丁寧に漢字で塵と書かれた。
この一因は名前にもあると思う。“誇”という僕に名は、親の“誇り”になれという圧力が込められている。しかし、実際はゴミ、埃なのだ。
──『誇じゃなくて埃じゃん』
何度そう、笑われただろうか。
親は、信頼できない。世間体ばかり気にして、僕で自分のステイタスを見せつけようとする。僕は単なる、親を飾る道具でしかない。無駄な装飾品のような存在。しかし、ゴミは飾れない。ゴミはゴミでしかないのだ。
学校の奴らはもっと信頼できない。嫌悪感しかない。平気で人をゴミ呼ばりする。殴る、蹴る、嘲笑う。それならいっそ無視の方が楽なのに。担任も見て見ぬふりだ。
地球のゴミが減るだけ。ゴミは消えなければならない。ゴミはゴミ箱へ。ただ、それだけだ。
「……僕も、星になりたい」
どこかで聞いた話だ。星は宇宙のゴミらしい。あんなに綺麗なゴミに憧れる。僕とは大違いだ。同じ“ゴミ”なのに。
幻想的なゴミに憧れる。宇宙のゴミはより一層輝きを増してきた。
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