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会社の行方
ソファで隣り合わせに座りながら聞いた和樹さんの話は、思いもよらないものだった。
和樹さんが優香さんを庇い、自分が悪者だと周囲に思わせてバッシングされている今の状況にも腹が立ってくる。
この人はどこまでお人好しなんだろうか。
「いいんだよ、俺がそうなってもいいって言ったんだから。こんな話を聞いたら彩ちゃんがあれこれモヤモヤするだろうと思ったから黙っていたんだけど…何も知らないのも辛かったよね、ごめん」
それに…と言いにくそうに和樹さんが付け加える。
「会社をマルヤマに買収してもらう手助けをしているだなんて言ったら、彩ちゃんに嫌われそうな気がして怖かったんだ」
しょんぼりしてうなだれる和樹さんの手を握った。
「和樹さんは、わたしたち社員とブランドを守ろうとしてくれているんでしょう?嫌いになるわけないじゃない。もっと早く教えてくれたらよかったのに」
顔を上げた和樹さんは、叱られた子犬のような顔をしている。
「もしもこの話をもっと前に聞いていたら、和樹さんのことを悪く言う人たちに向かって、それは違うって言いたくて悔しい気持ちになってたと思う。それがわたしの負担になるだろうからって気遣ってくれたのは和樹さんの優しさなんだろうけど、それよりも、わたしはその苦しさを共有したかった」
一人で背負わないで、その重たい荷物を少しわたしにも分けてくれたらよかったのにと思う。
「そっか。そうすればよかったんだね。ごめん」
秘密はそれだけかと尋ねると「実はもう一つ…」と言うから、まだあるのか!と身構えた。
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