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この日の和樹さんの帰宅は深夜だった。
マスコミ対応や今後の事務処理に追われていたらしい。
「和樹さん、お疲れさまでした」
玄関で出迎えてこれまでの奔走と奮闘を労うと、先に寝ていてくれてよかったのにと言いながらも、和樹さんは嬉しそうにふわりと笑ってわたしをぎゅうっと抱きしめた。
「ありがとう。こういうの、すごく癒される。今度の休日に指輪を買いに行こうか。結婚しよう、彩ちゃん」
え、待って。
もしかしてプロポーズ!?
驚いて固まっていると和樹さんもハッとした様子で体を離し、脱力してふにゃふにゃになりながらわたしの肩に額を乗せた。
「ごめん、心の声が漏れた。もっとしかるべき場所できちんと思い出に残るプロポーズをしようと思ってたのに」
この人は見た目の完璧さとは裏腹に、中身は結構ポンコツで不器用な人なのだ。
玄関でのこんなプロポーズも和樹さんらしい。
笑いながら和樹さんの背中に手を回した。
「ありがとう和樹さん。不束者ですが、よろしくお願いします」
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