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コツコツコツ
翌日、化粧室から出てデスクに戻ろうとした矢先、廊下の向こう側から聞こえきたハイヒールの音。
反射的に私は顔を俯ける。
「おはようございます社長。今日もお美しいですね!」
「おはよう。ふふ、ありがとね三郷ちゃん」
いつもなら目の保養でその姿を拝んでたけど、昨日の今日で社長とは関わりたくないっていうか…
バレないようにそーっと戻ろ。
…なんていう私の願いも虚しく
ポトッ
「げ」
社長の脇をすり抜けようとしたとき、持っていたポーチの中から一つのリップがタイミングよくポトリと落ちた。
「げ、って何よ、支倉ちゃん」
「す、すいません…あの、それ…」
社長は、目の前に落ちたそのリップを手に取り、何を考えているのかジーっとそれを見つめる。
え、もしかしてそのリップちょうだいとか言われる感じ?
「…あなた、自分のパーソナルカラーをちゃんと調べた方がいいわね」
「は?」
「こーれ。あなたのお顔にはちょっと派手すぎるんじゃないの?」
「なっ、余計なお世話です!」
パーソナルカラーだと!?
なんでそんなことオネエの社長に言われなきゃいけないんだ!
「あ、それと…」
リップを私に渡し、再度社長は床に手を伸ばす。
「このキーホルダー、面白い顔してるわね」
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