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「あ…」
そう言って久我社長は、ブサイクな顔をした猫のキーホルダーを私に渡した。
ポーチの中に入れていたキーホルダー。
それがどうやらリップと同じタイミングで落ちてしまったらしい。
「それ、ブサカワで人気のキャラクターよね?」
間抜けな表情が可愛らしくて女の子に人気のキャラクター。
「さすが社長、パーソナルカラーといい、このキャラクターといいよく知ってますね…」
「あったりまえじゃない、女の子の流行は常に追ってるもの!」
「はあ…」
ていうか…いきなり結婚が決まっても、普通こんなに何事もないかのように振る舞えるものなの?
「どうも、ありがとうございます…」
拾ってもらったリップとキーホルダーを手にしてその場を離れようとする。
「どういたしまして」
どうやら気にしているのは私だけらしい。
あ、なるほど。やっぱり昨日のあれは夢か、悪い夢。
うんうん、お父さんの会社が倒産して政略結婚なんてどこの漫画の話だよって…
「あ、そうだわ。支倉ちゃん」
「…はい?」
「コーヒー、社長室までよろしくっ」
しかし、どれだけ昨日のことを夢だと思いたくても、彼の表情がそれは現実だと強く物語っていた。
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