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朝陽が差し込むリビングで、私の耳に一番に入ってきたのは目覚ましの音。
「きゃあああっ!」
「ん…っ、うるさ…」
「な、な、なんで支倉ちゃんがっ!?」
…ではなく、騒々しい社長の声だった。
朝っぱらから騒がしいな。
「…おはようございます社長」
「おはよう…じゃなくって!なんで私と支倉ちゃんが一緒にソファで寝てるのっ!?」
この人…昨日私にあんなことしたくせに覚えてないなんて。
タチの悪い人め。
「しかもその腕…ネクタイ…えっ!?まさか私達…!」
よからぬ想像をしたのか、サァッと顔から血の気が引いていく社長。
あー、そっか…腕はネクタイで縛られたまま寝ちゃったんだった。
…痺れてるし。
「言っときますけど私はなにもしてませんよ?社長が私を押し倒した挙句、離してくれないまま眠っちゃったんですからね」
「嘘…」
「ま、でも一線を超えなかったっだけまだマシ…」
いつも通り軽い調子でとぼけられると思い、私も特に気にせず話すつもりだったものの。
「ごめんなさい支倉ちゃんっ!!」
今までにないぐらい真剣な顔つきに変わる社長に、私の方が呆気に取られてしまった。
「え」
「こんなこと言ったら言い訳にしかならないかもしれないけど…昨日は飲みすぎて本当に記憶がないの…!」
だから本当にごめんなさい、と再び頭を下げる社長。
昨日の社長とは違って、嘘みたいにしおらしいじゃないか。
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