Episode.01

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「…なんの冗談ですかこれ」 「それが冗談じゃないのよ」 私の目の前に座るのは、相変わらず綺麗なお顔の久我社長。 「冗談じゃないならこれは夢ですか?」 「…残念ながら夢でもないわ」 小洒落たレストランで向かい合う私と社長の間のテーブルには、一枚の紙切れ。 「さっき話した通りよ。これにサインしてほしいの」 …いくら社長でも、冗談はオネエってことだけにしてほしい。 さすがにそろそろ叫び出しそうだ。 もう冷静を保つとか無理でしょ、この状況。 「ほら、早くサインして?」 久我社長の言葉で紙切れに視線を戻したところで、私の理性はいきなり音を立てて崩壊した。 「…できるわけないじゃないですかっ!!婚姻届にサインなんて!!!」 上司と部下。 それ以上でもそれ以下でもない私達の間に、どうして婚姻届なんかが置かれているのか。 それは1時間前の、とある電話が原因だ。
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