Episode.01

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「だから、彼氏にプロポーズされたら私とは離婚すればいいのよ」 「いやいや!彼と結婚するときバツがついてたら、珍しくないどころか不自然極まりないですよ!」 「んもうっ、そんなの学生時代に若気の至りで結婚しちゃったのキャハッ!とでも言っとけばいいのよ」 社長にこんなこと思うのは失礼なんだけど…この人馬鹿なんじゃないの。 なんて、口が裂けても本人には絶対に言えない。 「支倉ちゃんが私と結婚すれば、家族みんな救われる。彼氏とはそのまま付き合い続ければいい。プロポーズされたら離婚もできる」 「…なにが言いたいんですか」 「これ以上好条件な結婚、あるかしら?」 さすがエリート社長とでもいうべきか。 まるでプレゼンかのような話ぶりに、私みたいな凡人が反論する術を持ち合わせているわけもなく。 「…分かりました」 渋々私がサインするのを見て、社長は満足気に微笑む。 「あ、そういえばひとつ言い忘れてたわ」 「…え?」 「別にバツがつくのは珍しくないけど、私に離婚歴があるのは嫌だから…」 久我社長は、席を立ち上がる私の腰を引くと耳元で低く囁いた。 「あなたと彼氏の邪魔、させてもらうわね?」 …新婚生活、早くも前途多難な予感。
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