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「さすが私だよね~。
ありがとう、そう言ってくれて」
さすがことりちゃん! 彼女はそう言いながら体の前で両手を組んだ。
割れんばかりの笑顔で僕を見つめてくる。
ちょっと、恥ずかしくなるからやめて欲しい。
訳も分からずその場に立っている僕を横目に、彼女はノートパソコンの前に立った。
その画面にはスマートフォンみたいな枠の中に、デフォルメされた赤ずきんみたいなキャラクターが映し出されている。
見たこともないゲームの画面なのだろうか。
僕はしばらくその様子を見つめていた。
横顔から見える彼女の表情がなんだか生き生きとしていて、楽しさに溢れている。
あのテレパシーは本当なんだな。
そう思っていた。
だから、僕は思わず声をかけていた。
「あの、これは何かのゲームですか」
声を掛けられた彼女は動きを止めて、こちらを見てくる。
そして笑顔のままこちらを見て言ったんだ。
「作ったのよ。私が」
今、なんて言ったのだろうか。
作った? たしかにそう言ったんだ。
「あの、作ったってどういう?」
「だから、作ったのよ。
ゲームとは呼べないけれど、私がデザインした」
彼女はさらっとすごいことを言ってのけた。
僕は目をぱちくりさせた。
すると、彼女も目をぱちぱちさせて僕の方を見てくる。
「もしかしてだけど、君もそういうの興味あるの?」
僕は思わず頷いた。
うんうんと彼女は頷きながら会話を紡ぐ。
「じゃあ仲間だね。
私は有坂 ことり。君の名前は?」
彼女は手のひらを広げた腕をこちらに伸ばしてきた。
なんだか、愛嬌のある彼女に惹きつけられるような感覚だった。
赤ずきんに誘われて、これから僕の世界が始まるんだ……。
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