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「えっと……おめでとう……っていうかだれと?」
『だれって……この流れで良吾しかいないじゃん』
「…………えぇっ!? どういうこと!?」
『ほんとはさ、良吾とふたりで同盟作ってたんだよね』
「同盟?」
『そ。あたしはアキラくん、良吾はのぞみちゃんをゲットできるようにお互い手を貸すってことで。だってさ、どっちかがうまくいったらもう片方もうまくいく可能性が高くなるじゃない?』
「ま、まあそうだけど」
あくまでも理論的には。
でも、人間の心はそう単純な話ではないと思うのだけれど。
『でさ。結果はまあ知っての通り結局ふたりとも撃沈して、あのあとふたりでヤケカラオケに行ったんだよね』
ふたりで失恋ソングを歌いまくって、恨みつらみをその場にいない相手に(つまりわたしたちに)ふたりしてぶつけて、そんで「なんかおれら気が合うよな」ってなったらしい。
「そ、そうだったんだ」
『ねえ、どう思う!? その……良吾のこと』
「えっ……」
それをわたしに聞くの? わたし、今日磯谷くんのことをフッてしまったばかりなのに。
だけど。
「……磯谷くんは、きっと悪い人じゃないと思うよ」
気づいたらそう言っていた。
豹変した磯谷くんは、すごく怖かった。
だけど、ひょっとしたら自分が悪役になりきって、わたしがフッたことに罪悪感を感じないようにしてくれたのかもしれない……。
なんとなくだけど、そんな気がした。
だって、教室を出て行くとき、磯谷くんの目の端っこがキラッと光ったような気がしたんだ。
もう、どこからどこまでが演技で、どの磯谷くんが本当の磯谷くんなのか全然わからない。
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