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『まあ、あのふたりならなんだかんだでうまくいきそうじゃね?』
「うん、わたしもそんな気がする」
ふたりで笑い合って……そこで会話が急に途絶えてしまった。
あ、あれっ……? なにを話したらいいのかわからない。
どうしよう!
流れる沈黙に落ち着かなさが募っていく。
『――まあ、今のは電話する口実だったんだけど、さ』
桜井くんが沈黙を破るように、ゆっくりと口を開いた。
『今度の休み、どっか行かね?』
桜井くんの言葉に、ドクンと心臓が飛び跳ねる。
これって、いわゆるデート……ってことだよね?
『映画。映画行こ』
「桜井くん、なにか見たい映画あるの?」
『…………』
あれっ? 返事が返ってこない。
『おれ、カレシなんだけど?』
「そ、そうだね」
『晃一』
「へ?」
『おれの下の名前』
桜井くんがむくれた声で言う。
「そうだね」
『だから! 晃一って呼んでよ。おれ、もう亜希のカレシなんだからさ』
いいい、いきなりですか~!?
でも、わたしも桜井くんに『亜希』って呼ばれるとうれしいし……。
桜井くんもうれしいって思ってくれるんだったら……!
「こ、晃一……くん、なにか見たい映画あるの?」
最大限の勇気を振り絞って言い直す。
『ある! アニメ映画なんだけどさ、最近めっちゃ話題になってるやつ』
「ひょっとして、新空監督の最新作?」
『そそ、それそれ!』
「うん、わたしも行きたいって思ってたんだ」
『じゃ、豊島園駅の改札に10時集合な』
「わかった。待ち合わせって、なんだかデートって感じだね」
えへへっと笑いながら言うと、
『ったり前だろ。初デートなんだから』
当然といったふうに晃一くんが言う。
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