好きな人の声は聞こえない

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「吉良さ~ん、おつかい頼めるかな~」 「はーい。いいですよ~」 吉良(きら) (めぐみ) 27歳。 商社勤務、営業補佐。入社5年。 容姿は普通・・・可もなく不可もなく・・・ 学生時代からそうだった。成績も中くらい、背もいつも真中くらい。いたって目立たない女の子だった。 会社勤めを始めたころは、2~3年勤めて社内結婚をするという絵を描いていたが、既に5年。計画は崩れた・・・ 仕事は淡々とこなしていた。特に大変でもない、言われたことをやっていればよかったし、特に昇進したいとも思わなかったので気楽なものだった。  得意先に書類を届けるおつかいを同じ課の野村(のむら)君に頼まれた。 「吉良さん、申し訳ないのだけどこれ××社の○○さんに届けてくれるかな。バイク便使ってもいいんだけど大切なものだし急ぐから直接手渡してほしいんだ。渡したら僕に電話くれるかな。」 「わかりました。おつかい行ってきます。」 いつもはデスクにいるばかりだから外に出るのはうれしかった。 電車に乗り30分、歩いて10分の所に××社はあった。天気も良かったので歩いて10分の道のりは苦痛ではなかった。××社に着いて受付で担当者の○○さんを呼び出し、書類を手渡した。終わったので野村君の携帯に連絡を入れた。 「野村さん、今○○さんに書類渡し終わりました。」 「吉良さんありがとう、気を付けて帰ってきてね。」 後は、会社に帰るだけ・・・と、のんびり駅に向かって歩いていた。 その時、後ろから自転車が結構なスピードで走ってきていたが、恵は気が付かなかった。自転車のハンドルが恵のバッグに引っかかって、恵はおもいっきり引っ張られて転倒した。 意識を失った・・・
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